ある日、会社の喫煙室で社宅の隣の棟に住んでいる中の良い同僚に言いにくそうに耳打ちされた。

恵理さん、パート先のスーパーの若い店長と噂になってるぞ。

最初、冗談を言われたのかと思いましたが、相手の顔を見て本気だと知って、ショックでした。

 

妻とは30歳の時結婚して20年ですが私自身、大きな不満はありませんでした。

私はサラリーマンではありますが、それなりに年齢に応じたキャリアを積んできて、生活費もしっかり渡していて、経済的な不満をこぼされたこともなかったので、その点では妻にも不満はなかったと思います。

確かに、妻とすれ違いがなかったのかと言われてみると、今考えてみると、ここ5年程、すれ違いが顕在化してきたなと思える出来事もありました。

典型的なのが子供の進路の事。もう大学生の息子の進路について、妻は私と同じような大企業に入れたがっていました。一方、私はこれからの実力主義の社会では自分のやりたいこと。情熱を持てることに進んだ方が良い人生を歩めるという考え方だったので、その話になるたびに平行線。時には口げんかになることもありました。

でも、子どもの進路のことは今までも中学受験や大学受験でも意見が食い違ったりしてきましたが、その度に亀裂が深まっていたとは思えません。

 

などと色々心当たりを探りましたが、原因は結局分かりませんでした。

とは言え、同僚の意見も無視できず、逆に「浮気の噂はデマだったよ」と言い返してもやりたかったので、自分なりに妻の様子に変わりはないか探ってみました。

 

朝の様子、帰ってからの夜の様子を注意して見てみましたが、相変わらず、ほとんど化粧っけもなし。たまに土日にデパートに買い物に行くときも一緒についてきたし、その時もほぼすっぴんでした。来ている服もいつもの見慣れた着古したもの。急におしゃれになった様子もありませんでした。

土・日にパートに出かけることもありましたが、普段と少しも変わらない服装だったし、帰ってきてからの様子も、取り立てて変な感じもしなかったので、やっぱり、同僚の勘違いだったのだろうと思っていました。

おまえ、パート先で浮気してるって噂になってるぞ。

くらいの軽口をたたいて反応を見てみようかとも思いましたが、万一、妻が動揺するそぶりなどしたらと思うと怖くて、言い出せませんでした。

そういう意味では、同僚の勘違いと思いつつも、100%妻を信じていたという訳ではなかったんだと思います。

 

そんな、ちょっと安心していた時、突然、妻が置手紙1枚で、家出をしました。

人生を考えなおしたいです。しばらく、家を出ます。

青天の霹靂でした。